眼振

眼振(がんしん)とは

眼振とは、眼球がけいれんしたように動いたり揺れたりすることの医学的な名称です。無意識で規則的にリズミカルに動いたり、振り子のように往復運動がおこったりします。眼の動きを上手にコントロールできない場合に起こり、両眼にみられることが原則です。眼振はさまざまな原因でおこります。また、生理的眼振(正常な眼振)は、例えば動く乗り物の中から外の景色を見ているときにだれにでも起きる眼振です。生理的眼振がおきていることは物をみる視力があることの証拠になるので、赤ちゃんの視力の評価にも使います。
脳の障害、耳の障害、薬物中毒、その他の全身疾患のために眼振が起きることがあります。通常、このような眼振はめまいが起きたり、物が揺れて見えたり、その他の全身の症状を伴います。
眼科で扱う眼振には、著しい低視力のために起きる場合と、眼に問題がないのに眼の動きが定まらないためのものがあります。眼振のために眼球がみたいもののところで静止しないと、眼に異常がなくても視力が悪い場合があります。
いずれにしても、眼が自然に揺れて静止しない状態がみられたら、すぐに医療機関を受診してください。

乳児眼振(先天眼振)
はじめに

乳児眼振(先天眼振)とは、生後間もない乳幼児期早期から眼振があることを意味します。眼振は揺れのタイプで衝動眼振と振子眼振に分けられます。衝動眼振は行きと戻りの揺れの速度が異なるタイプで、振子眼振は行きと戻りの速度や揺れの幅がほぼ等しく、時計の振り子のような動きをするタイプです。衝動性眼振は物をよく見ようとしたり、精神的ストレスがかかると悪化することが多く、寄り目や目を閉じると少し改善する場合があります。振り子様眼振は著しい低視力の場合に見られ、何らかの眼の先天異常からくると思われます。

原因

眼球に異常がない眼振では、眼の動きをコントロールする神経系の障害と考えられています。眼の異常によるものとしては、先天無虹彩(茶目が欠けている)、先天黄斑低形成(物をみるための網膜の中心がうまくできていない)、先天白内障(うまれつき水晶体が濁っている)、先天網膜色素変性などの重症の病気の可能性があります。

症状

視力障害と関係することがありますが、その程度は様々です。物が揺れて見えたり、めまいを感じたりすることはありません。目の向きによって眼振が小さくなる位置があるので、ものを見るときに、顔を左右に向けたり顎を上げたり下げたりする頭位異常がおきます。また、眼が内側に寄っていると揺れが少なくなる眼振では、どちらの眼も内側に寄って内斜視のようになることもあります。眼に異常のない眼振では、眼の揺れの程度は成長するにともなってよくなってきます。

診断

目の揺れを観察して診断します。眼に先天性の異常がないかを詳しく調べます。眼の揺れの程度や速さが視力に影響するために、電気眼振検査などの装置を使うこともありますが、どこの眼科にもあるわけではありません。

治療・管理

眼振を完全に治療する方法はなく、眼鏡、プリズム療法、薬物療法、手術療法などで症状の緩和を目指します。顔を著しく回して物を見ている場合や、内斜視が強い場合は手術療法が行われることがあります。眼に異常があることがわかれば、もとの異常を治療します。治療ができない場合や、治療をしても視力が悪い場合には、少しでも見えやすくするための方法を眼科で相談できます。

潜伏眼振(せんぷくがんしん)
はじめに

潜伏眼振とは、普段は眼振がみられないのに、片眼を隠すとおきる眼振のことです。生まれてすぐから視力障害や斜視などがある場合が多いです。

原因

両眼視機能が遮断されることで眼振が誘発されます。

症状

片眼を隠すと隠していない方の眼に向かう眼振が両眼にみられます。潜伏眼振の振幅は、隠していない方の眼を鼻側に向かせると小さく、耳側に向かせると大きくなります。

診断

視力検査の際に片眼で測定した視力が両眼で測定した視力より著しく低下した場合は潜伏眼振を疑います。その場合、不完全遮閉(眼振の出現しにくい度の強いプラスレンズで片眼を隠す、方向転換ミラーを用いるなど)を行い視力検査します。電気眼振図(ENG)で眼振の波形を分析し鑑別することもあります。

治療・管理

潜伏眼振自体に対する治療法はありませんが、日常生活では両眼をあけているので、眼振自体が目立つことはありません。