弱視

弱視とは

弱視という言葉は、「通常の教育をうけるのが困難なほどの低視力」という意味で一般的に使われていますが、医学的には「視力の発達が障害されておきた低視力」を指し、眼鏡をかけても視力が十分でない場合をさします。しかし早期発見、早期治療で治療可能なことがほとんどです。ここでは後者の弱視(医学的弱視)について説明します。
視力は、ことばや歩行などと同じく、成長に伴ってだんだん獲得する能力です。0歳では0.1ぐらいの視力しかなく、3歳ごろに大人と同じ視力に達するとされます。ただし、それを言葉に表現できるのは4歳ごろになります。
この視力の成長期に、何らかの邪魔が入って正常な視力の成長が止まってしまい、眼鏡をかけてもよく見えない状態を「弱視」と呼びます。つぎのような4つの原因があります。ただし、弱視は除外診断と呼ばれ、他に目の病気がなにもないと確認することが重要です。そのため、しっかり検査できる年齢になるまで、本当に弱視と判断することは難しく、視力検査だけで弱視と判断するわけではありません。屈折検査や斜視検査などを総合的に判断して、弱視になる可能性が非常に高いと判断すると、予防的に治療を開始します。
視力の成長は、他の成長と同じくいつかは止まり、臨界期(感受性期=10歳頃まで)を過ぎると治療に反応しにくくなります。早期に治療を開始するほど、治療に反応して視力が改善していきます。
治療の目標は眼鏡をかけて1.0の視力が出ることです。視力は1.0が正常値で、それ以上いくらあっても正常です。ピントがあっている状態で視力が出ることが重要で、眼鏡をかけて1.0あれば正常です。裸眼視力がいくら悪くても、眼にあった眼鏡をかけた状態で1.0の視力が出れば弱視ではありません。

屈折異常弱視
はじめに

屈折異常弱視とは、遠視・近視・乱視が両眼とも強いためにおこる、両眼の視力障害です。

原因

いちばん多いのは遠視です。程度が強ければ近視や乱視でも屈折異常弱視を発症しますが、遠視は近くでも遠くでもピントが合わない状態なので、眼鏡をかけない限り、くっきりとものを見ることができません。生まれつきいつもはっきりものが見えていない状態でいると、視力が成長しにくくなります。それに対して近視では遠くが見えにくいですが、近くのものはピントが合うため、弱視にはなりにくいです。ただし極端に近視が強いと弱視になります。

症状

目を細めて見る、近づいてものを見るなどの症状で気づくことがあります。程度が軽い場合には、視力検査ができる年齢まで気付かないことがあります。3歳児健診、就学時健診で見つかるケースが多いです。

診断

両眼に強い屈折異常があることを、目薬を点眼して調べます。視力は年齢に応じて参考程度に扱います。このほかの眼科一般検査では異常はありません。

治療・管理

眼にあった眼鏡を装用することが大切です。視力の発達に左右差がでてくれば追加の治療をします。早期に治療をするほど、早く視力が成長しますが、眼鏡をはずすと見えにくい状態はずっと続くため、視力が改善しても眼鏡が外せるようにはなりません。

不同視弱視(ふどうしじゃくし)
はじめに

不同視弱視とは、遠視・近視・乱視に左右差が強いためにおこる、片眼の視力障害です。
片目の視力は正常に発達しているため、生活上に不自由はなく、周囲からは全く判りません。片眼性の弱視であるため、屈折異常の弱い眼の視力は良好であり、片眼ずつの視力検査や屈折検査で発見します。

原因

片眼の屈折異常が原因です。屈折異常とは遠視、近視、乱視を意味します。両眼の度数の差が大きければこのいずれでも不同視弱視を発症しますが、いちばん多いのは遠視です。度数の差は、2D (ジオプター)以上あると不同視弱視になる可能性が高まります。遠視は近くでも遠くでもピントが合わない状態なので、眼鏡をかけない限り、くっきりとしたものを見ることが出来ません。そのため、生まれつきはっきりものがみえないため、視力が成長しにくくなります。それに対して近視では遠くは遠視側の目で、近くは近視側の目で見るため、不同視弱視にはなりにくいです。ただし極端に近視が強いと弱視になります。

症状

片目の視力は正常に発達しているため、周囲からは全く判りません。3歳児健診や就学時健診でみつかるケースが多いです。

診断

片眼に強い屈折異常があることを、目薬を点眼して調べます。視力は年齢に応じて参考程度に扱います。このほかの眼科一般検査では異常はありません。

治療・管理

屈折異常を矯正するために眼鏡を装用することが大切です。まず眼鏡を装用して様子をみていきます。弱視眼の視力の改善が思わしくない場合は、健眼遮閉を行うことが多いです。アトロピンという薬剤を健眼に点眼する治療もあります。視力の左右差がなくなり、安定して視力が維持できれば、健眼遮閉は終了となります。早期に治療をするほど、早く視力が成長しますが、眼鏡をはずすと片眼は見えにくい状態はずっと続きます。両眼の機能を使うためには、視力が改善しても眼鏡が外せるようにはなりません。

斜視弱視
はじめに

斜視リンクは、右眼と左眼の視線が違う場所に向かっている状態です。斜視弱視とは、斜視があるためにおこる、片眼の視力成長障害です。片眼性の弱視であるため、斜視のない眼の視力は良好であり、片眼ずつの視力検査や屈折検査で発見します。

原因

斜視が原因です。斜視眼では網膜の中心部分(中心窩)で物を見ていないため、斜視眼の視力が発達せず弱視になります。

症状

斜視が原因といっても、見た目にわからない程度の軽い斜視のこともあり、片目の視力は正常に発達しているため、周囲からは全く判りません。3歳児健診や就学時健診でみつかるケースが多いです。

診断

視力検査では眼鏡をかけても十分によく見えないような片眼の視力不良がみられます。詳しい検査をすることで、眼の中心でものを見ていないかどうかを判断します。屈折異常の有無を確かめるため、小児では調節麻痺薬を点眼して屈折異常を検査します。不同視弱視を合併していることがあります。眼科一般検査ではこのほかには異常はありません。

治療・管理

固視異常があれば、固視矯正のために健眼遮閉を行います。固視が正常になれば、視力を上げるためにさらに健眼遮閉、薬剤(アトロピン)の点眼や斜視手術を行うことがあります。

形態覚遮断弱視(けいたいかくしゃだんじゃくし)
はじめに

形態覚遮断弱視とは、乳幼児期に形態覚を遮断することによって、非可逆的視力低下をきたしたものです。

原因

先天白内障、眼窩腫瘍、眼瞼腫瘍、角膜混濁、高度の眼瞼下垂、眼帯装用などのために、片方の目を使わない期間があることが原因です。

症状

形態覚遮断の原因があると考えられる眼の視力が眼鏡をかけても不良です。感覚性斜視(別項参照)を伴うことがあります。

診断

形態覚遮断の原因になる疾患の有無を調べます。また、眼底検査で形態覚遮断の原因以外の器質疾患を除外する必要があります。

治療・管理

原因疾患をできるだけ取り除くことが第一です。先天白内障では水晶体の混濁の程度に応じて、水晶体摘出手術が行われます。また、経過観察の中で屈折矯正や健眼遮閉などの弱視治療が行われます。