心因性視覚障害
はじめに
心因性視覚障害とは、心理的な原因によって引き起こされる視機能の異常で、眼には器質的疾患を認めません。視機能の異常としては視力低下のほかに視野異常などをみとめることもあります。発症は7歳~12歳の女児に多く、男児の約2倍と言われています。仮病と思われるかもしれませんが、本人は本当に視力が出ないと思い込んでいることがこの病気の特徴で、決して嘘をついて視力が出ないわけではありません。
原因
心理的ストレスで精神的葛藤、欲求不満などが原因となることもありますが、普段は良く見えているのに、視力検査をすると見えなくなってしまうこともあります。原因の背景は人によって非常に様々で、些細なことでも原因となることがあります。家庭環境での親やきょうだいとの関係や、学校での友人や先生との関係に悩んでいる場合、宿題や習い事などが負担になっている場合などもあります。我慢していることをうまく表現できず心理的ストレスになることも考えられます。また眼鏡を装用したいという思いで心因性の視力低下をみとめることもあります。背景となる原因がわからない場合もあります。
診断
心因性視覚障害は除外診断といって、他に眼の病気が何もないことが前提となります。そのため、眼球などに器質疾患がないか眼底検査などが行なわれます。単純に視力検査を行うと視力が出ないのに、検査を繰り返して特殊なテクニックを用いていくと、最終的にはレンズ度数がほとんど入っていない状態で視力が改善することがあります。また、視野検査ではらせん状視野や管状視野狭窄といった異常が出ることがあります。これは通常の眼疾患による視野異常ではなく、心因性視覚障害にのみみられます。こういった視野異常は、検査前にうまく声をかけて誘導すると正常の結果になることもあります。どうしても視力が出ない場合には、MRIなどを撮影して、本当に心理的な問題以外になにも病気がないのかをよく確認します。
治療・管理
まず原因となっている心理的ストレスを取り除くことが第一の治療となります。そのためには家族を含めた周囲の人々の理解と協力が必要となります。眼球に異常がなくても、何かしらの問題を抱えているのだと言うことを受け止めてあげることが大切です。ちょっとした環境の変化ですんなり視力が出るようになることもあります。症状の改善を認めない場合は心療内科や(小児)精神科の受診が必要となることがあります。